Arms for Two

 


 

ある冬の日。朝5時に大轟音と振動で目が覚めた。

寝ぼけながら急いでTVを付ける。

地震速報は?ない。10分待ったがなかった。

 

ダンプがどこかに衝突したのか?

 

俺は、いつもどおりに仕事に行くんだが。

ちょっと早く出てもいいか。用意が終わって7時50分に家を出た。

 

「?」

 

裏の山に巨大ロボットが墜落していた。

 

だがしかし、俺は会社に行かねばならん。

鍵をかけて、ゆっくり足を進める。

 

そこに彼女がいた。そして、語りかけられた。

 

「仝;〇‘Ξρан‖〆」

 

言葉が全く分からない。外人だ。

「Can you speak English ?」

首をかしげる。

「?」

英語もわからんのか。

「ズドラーストビチェ?」

「?」

ロシア語でもねぇ!!

 

山を見る。

あの山の送電線に当たらなくて良かった。あれは、凄い大事なはず。

 

「%●&※#_」スラブ系かギリシャ系っぽい気がする。俺の外国語の知識はそこまでだ。英語も未だに分からん。

彼女は左手の親指と小指を立てる。人指し指と中指とを顔の横に持ってくる。

分かった電話な。ほら、とケータイを出す。

「?」

これ普及してないの!? 家の鍵をわざわざ開けて、コードレスホンの子機を持ってくる。

喜んでるらしい。これぐらいの人助けはしてもいいだろう。

俺が会社に遅れないことには。

 

見てると、どうも繋がらないらしい。

 

ちなみに俺は、海外に電話する方法すら忘れた。

スイスに電話してくれとか言われたら、インターネットで検索する。スイスに用事が無い。口座も無い。人殺しなんか、絶対にしない。ゲームだけだ。

 

で、この女の人はなんて言うの?

 

「わたし。あなた。」

指さして聞いてみる。なんか怒ってる。駄目なジェスチャーなのか?

でも、意図は通じたようで、彼女は答えた。

「ワタシ、ユカコ」

日本人系列の名前じゃねーか!!

 

泣いてる。

山の上を指さされた。アレかい!

 

大体の事情が分かった。

人を助ける時は本能的に動けと、大学の先生も言ってたっけ。

会社にちょっと遅れる旨の連絡をして、ユカコを家に招き入れた。

 

厄介だが、ちょっと時間があれば終わる仕事だな。

俺は鉛筆でロケットエンジンの設計を描いて、見せてみた。こんなんだったよーな。

大学の先生とこ行けばなんとかなるのか、コレ?

まっすぐ上に飛ぶこと。近隣に迷惑がかからないこと。誰も死なないこと。

法律には、目をつぶってもらおう。

 

あれを打ち上げるための燃料、10万円ぐらいだろうか。100万円?もう一桁?

と考えてると、彼女がポケットから何かを取り出した。

見たことのあるカードだった。

そして言った。

「ありがとう」

 

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